映画 『この世界の片隅に』 を見てきた感想

こうの史代さん原作、「この世界の片隅に」のアニメ化映画を観てきました。

私はもともとこの原作の漫画が大好きなのですが、アニメ化された本作も期待に背かず素晴らしい作品になっていました。ファンとしては嬉しい限り。

本作は第二次世界大戦の数年前から終戦までを描いた作品です。しかし、戦争自体が主題となっているわけではなく、戦争という時代背景の中で生きる普通の庶民に光を当てている作品です。

本作の主人公は「ぼんやり」「おっとり」「おっちょこちょい」な女の子の『すずさん』です。

すずさんがお嫁に行った先で色々な人や出来事と遭遇し、戦争に巻き込まれて悲しい想いをしながらも「世界の片隅」でたくましく、だけど持ち前のおっとりとした優しさやユーモアを忘れずに生きていく。そんな物語です。

とはいえ、この作品はこんなあらすじで簡単に説明出来るようなものではないのですね。人と人の関係性、細かい感情の機微、時代に特有の空気感とか言葉では表現出来ないようなものがたくさん詰まっていました。魂は細部に宿る、と言いますが本作も昭和を再現するための細かい描写が随所に見られますね。

料理や縫い物やファッション、風呂敷の荷物の背負い方、草履の編み方。そういった細かいこだわりが見ていて楽しいです。何か映画を観る時、劇中のどこでも2、3分も見ればその作品が面白いかそうでないかが分かるという事ってありませんか? 私はあります。きっと、面白い作品はどんな場面でも細部にこだわりがあるからで、短い時間でも「それ」を感じ取れるからだろうなって思っています。

劇中、すずさんを取り巻く状況は私達が思い描く幸福な生活とは程遠いものですが、決してそれらが暗い描写ばかりで表現されているわけではありません。戦時中の貧しい毎日でも、明るくユーモラスなタッチで日常が描かれています。思わず笑ってしまうようなシーンだってたくさんありましたよ。

本当に辛い出来事が起こった後でも、周囲の家族や時間がすずさんを絶望の淵から救ってくれます。辛いからこそ繋がっていく人と人との本当の縁というものを考えさせられました。

私は作品のテーマなんていうものはどんな作品であれ、視聴者の受け取り方次第でいくらでも存在するものだと思っています。見る回数や時期によっても変わってくるかもしれませんが、私が今回の視聴で本作から感じ取ったテーマは「人間の本当の強さ」といったものでした。

どんなに辛い状況にあっても、理不尽でやり切れなくても、それでも「普通で当たり前の生活」を続けていく。それが本当の強さなんじゃないかな、と作品を見ていて思いました。そう言った意味ですずさんは本当に強い。何もかも普通じゃなくなってしまった世界の中で、ユーモアと優しさを忘れずに人間として普通でいられる事の尊さが感じられました。

本作ではヒーローも英雄も出てこないしスカッとするような展開もありません。だけど、心の深いところに染み込んでくるようなものが確実にあります。言葉で表現するのは難しいですが、「強さ」とか「優しさ」とか「やりきれなさ」とかそんなものでしょうか。

映画を観た後の余韻がいつまでも消えません。本当に劇場へ観に行って良かったと思っています。上映中も上映後も劇場のあちこちからすすり泣くような声が聞こえていました。かくゆう私も中年おじさんのくせに涙を堪える事が出来ませんでした。原作を知っている事もあり、衝撃的な事故が起こる10分ほど前からすでに泣いていましたよ。お恥ずかしい。

想像もつきませんが、もし原作を未読で本作を視聴したら私はどうなっていたか、という事が気になります。周囲にひかれるくらいに嗚咽を漏らして泣いてたかもしれませんね 笑

ちなみにこの作品はクラウドファンディングで資金を集めて公開までたどり着いた作品です。スタッフと熱心なファンの皆さまの応援の結晶ですね。映画のエンドロールにてクラウドファンディングに出資した方々の名前が流れるのですが、これはファンとしては本当に嬉しいのではないでしょうか。大好きな作品のエンドロールに自分の名前が出てくるなんて夢みたいな出来事ですよ。

私ももっと早くクラウドファンディングの事を知っていたら是非とも参加させて頂きたかったです。いつか機会があったら何かしらの作品に参加してみたい、という気にさせられました。この作品の成功は、今後、この手のクラウドファンディングが活発になるきっかけになるかもしれませんね。

さて、簡単ですが『この世界の片隅に』を見た感想は以上です。

作品のファンとしましては1人でもたくさんの方に観て頂けたら嬉しいです。興味があるけど行こうか迷っているという方は是非是非劇場に足を運んで欲しいなって思います。

という事で、終わり。

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